Charlotte(シャーロット)

感想とレビュー

●不完全な能力
Charlotteは思春期の少年少女の中でごく一部の人に発症する特殊能力とそれを発症した少年少女たちをめぐる物語である。
「5秒間だけ任意の対象の体を乗っ取る」「真っ直ぐしか進めない瞬間（超高速）移動」「能力使用後自分も眠ってしまう催眠能力」等、その能力には不完全な部分が多く、能力者が思春期の少年少女という不安定な時期の子供という部分も関係しているのではないだろうか。

●クズ野郎からヒーローに
主人公の乙坂有宇は他人に5秒間だけ乗り移ることができる特殊能力を持っている。
勉強は一切せずカンニングだけで中学校の学年トップに上り詰め、志望校への合格を果たす。カンニング行為が疑われ、退学に危機に直面しているところに友利奈緒という少女が現れ、そして特殊能力の宿命に巻き込まれていきます。
友利奈緒と出会い星ノ海学園生徒会で共に活動する中で有宇にも少しずつ変化が表れてくる。
乙坂有宇の更生が決定的になったのが、妹を亡くして自暴自棄になって失踪したあげくにクスリに手を出してあと一歩で転落人生になるところを友利に助けられたことだ。その後のタイムリープでこのことはなかったことになってしまっているが、友利に助けられたことが後の大活躍に大きく影響している。
最終的に主人公たちは能力者を中心とした世界的な争いに巻き込まれていく。友利の提案で有宇は「世界中すべての能力者の能力を奪い尽くすこと」を決意。自身の記憶を失ってしまうほどの苦難に満ちた長い長い旅だったが、それでもなお彼の心を支えたのは友利への思いだった。
苦しい時、友利いもらった英単語帳を見て旅を続ける有宇の姿に胸を打たれた視聴者も多いはずだ。

●友利奈緒
利他的な行動をしているヒロイン友利だが、作中ではさほど善人のようには描かれてはいないし、誰かから賞賛されることもない。むしろ能力者に対する無理解から攻撃されることもあった。そんなひどい境遇にあって苦しみに対して不感症になった友利が最後に感情を取り戻すところもCharlotte見どころとなっている。
ほとんど無表情で淡々とした口調で話す友利だが、同じ生徒会メンバーの前ではくだけた口調になったり時に有宇や高城に「引くな！」等きついツッコミを入れたりする。
最終回、「乙坂有宇くん、お帰りなさい」と言った友利の目には涙が浮かんでいた。思ってみればここまで笑うことはあっても涙を見せたことは一度もなかった。兄が回復した回では後ろ姿だけで表情は見せていなかった、これにより友利の涙が「安い」ものではなくなり見る人をより惹きつけるという憎い演出がされている。

●「これからの記録」と「これまでの記録」
一番最後に友利は「これからは楽しいことだらけの人生にしていきましょう！」と言って作品は締めくくられる。
有宇がすべての記憶を無くした後の世界、友利はこれからもみんなのことをビデオで撮り続けていくのだろう。
そして、奈緒の持っているビデオカメラには有宇や生徒会メンバーがこれまでに過ごした「これまでの記録」もきちんと残っている。
その「これまでの記録」を見ていくうちに有宇が少しづつ失っていた記憶を取り戻していくのかもしれない。
すでにアニメは終わったしまったためこの語の展開は想像でしかないが、友利が作中ビデオを撮り続けていた意味はここにあったような気がする。