
乱歩奇譚
おすすめポイント
うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと
作家・江戸川乱歩の作品群を原案としたオリジナルアニメ作品
乱歩作品、没後50年を迎えて初のアニメ化
原作を土台にした、新たなキャラクター構成
感想とレビュー
●江戸川乱歩の作品群を原案とした全く新しいストーリー
とある中学校で起こった教師のバラバラ殺人事件。
この学校に通う少年・コバヤシは、事件の捜査に訪れた天才探偵・アケチと出会う。
異常犯罪ばかりを捜査するアケチに対して興味を持ったコバヤシは、友人のハシバの心配をよそに、自ら「助手」を志願する。
最初は断るアケチだったが、「自力で事件を解決し、自分の嫌疑を晴らすことが出来れば、自分の助手に採用してもよい」と条件を出す。
その言葉を受けたコバヤシは、ハシバの協力を得つつ、見事に犯人を導き出す。
かくして助手の座を得たコバヤシは、次々と起こる奇怪な事件の中で退屈な日常を捨て置いていくのだった
各話のサブタイトルは江戸川乱歩の作品名になっている。
しかし、事件の内容やストーリーなどは全くの別物で、まさに「原案」といった感じだ。
どの部分がどのようにどの程度オマージュされているのか。考察サイトを見るのも一つの手段ではあるが、実際に原作を読んでみて、自分なりに探すのも楽しみ方の一つである。
●原作の登場キャラを土台にした、新たなキャラクター構成
通常、明智探偵が描かれる場合は壮年の渋い男性である事が多いのだが、この作品でのアケチ探偵は高校生である。
神経質で缶コーヒー依存症で、多量の錠剤を服用している。巨漢を倒すほどの戦闘力を持っているが、戦闘技術に身体の方がついていかない為、戦えばほぼ確実にどこかを傷めている。
コバヤシ少年は、極めて女性的に描かれ、仕草も可愛らしい。
黒蜥蜴はかなり強烈なキャラクターになっており、その姿は是非、作品を見て確認して欲しい。
ちなみに、この作品では一部のキャラを除いて、登場人物の名前は基本的にカタカナ表記で苗字だけ…という体裁になっている。
これは、原案として元になる人物がいるがその人物は土台となっているだけで、彼らとは全く別の存在であるという意味かもしれない。
●独特の演出で進む物語
この作品では「舞台のような演出で、自由な表現を行える思考空間」という手法が盛り込まれ、事件の推理をする際、まるで観劇をしているかのように事件の内容と思考を整理する。
自由な表現で行われる推理シーンは、見どころの一つである。
また、物語を誰の視点から見ているかで、人物の描写が変わってくる。
例えば、コバヤシ少年から見た世界では、友人や興味を持った人間以外はシルエットのように描かれる。興味を持たれて、ようやく彼の世界に登場する事が出来るのだ。
そして別の人間が視点になった場合、やはり演出は同じだが描かれ方が少し違ってくる。
それぞれのキャラクターの持つ世界観が垣間見え、そして薄っすらと寒くなるような演出になっている。
●たった一回のギャグ回の完成度が高い
この作品では、事件は起きるが誰も死なず、終始コメディタッチで終わる……と言う話が一話だけ存在する。
閑話休題とでも言うべきか。しかし、テンポ良く話が進み、キャラクター性が存分に発揮され、あっという間に30分が過ぎている……その回の完成度は非常に高いと言えるだろう。
こんな人にオススメ!
・ミステリーが好きな人!
・江戸川乱歩が好きな人!
・乱歩は読んでいないが気になっている!
・怪奇、幻想、グロの世界観に浸りたい人!
スタッフ
監督:岸誠二
シリーズ構成・脚本:上江洲誠
キャラクターデザイン:森田和明
総作画監督:山形孝二、鎌田祐輔
アニメーション制作:Lerche
キャスト
アケチ:櫻井孝宏
コバヤシ:高橋李依
ハシバ:山下大輝
カガミ:小西克幸
ナカムラ:チョー
黒蜥蜴:日笠陽子
影男:子安武人
ミナミ:藤田咲
死体くん:山口勝平
その他:福山潤、中原麻衣など