俺物語

感想とレビュー

●少女漫画の男主人公はイケメンとは限らない

身長推定2m、体重推定120kgの巨躯と、ゴリラを彷彿とさせるいかつい顔。さわやかな主人公の親友、もしくはライバル……のようなビジュアルの剛田猛男。
真っ直ぐで不器用な性格をしており、困った人を見かけると脊髄反射的に助けに行くぐらい正義感が非常に強い。
ある日、電車で痴漢に遭っていた大和凜子を助けた際に一目惚れをする。
しかし、彼がこれまでに好きになった女子たちは、クールで秀才でイケメンの親友・砂川誠を好きになっていた。
後日、お礼に訪れた凜子の様子から、彼女もまた砂川を好きになったのだと思い込む。
しかし、凛子が想いを寄せる相手は猛男の方だった。

●とにかく主人公が男……いや、漢らしい！

主人公である猛男が、とにかくカッコいい！
常人…どころか、人間離れした身体能力と行動力は原作が少女漫画である事を忘れるくらいである。
ビンの蓋を栓抜きを使わずに素手で開けたり、火災ビルから人を助けて自身も脱出したり、崖から落ちたら凛子を助けつつ着地したりと、超人エピソードは枚挙に暇がない。
しかも、そのほとんどが自分の為というよりも他の誰かの為に…という場合ばかりなのだ。これを漢と呼ばずとしてなんと呼ぶべきか。
とにかく、見ていて「猛男がいれば、まあ大丈夫だろう」という安心感が尋常じゃない。
残念ながら…というか見た目通り…というか、勉強の方は不得手であり、物事を深く考える事などは苦手である。
しかし、だからこそ恋愛ものであるにも拘わらず、変に説教臭くならないのが良い。
男女を問わず、気持ちよく見られる作品になっている。

●主人公以外のキャラも漢らしい

猛男の漢っぷりは天井知らずなのだが、他の登場キャラクター達も負けず劣らずの漢らしさを発揮している。
親友の砂川は、大人しくクールな性格をしているのだが、周囲に気配りが出来るし状況判断も的確だ。
女子に大層モテるのだが、告白してきた子達がいずれも猛男の悪口を言っていたため、「友達の悪口を言う奴とは付き合いたくない」と断っていた。
猛男と凛子が付き合う前もその後も、二人からの相談に嫌な顔一つせずいつも親身になってアドバイスをしてくれている。
作中で猛男も言っているが、本当に「良い奴」なのだ。

また、凛子は一見大人しそうに見えるのだが、意外と行動的なのである。
一目惚れした猛男に対し、自分からきっかけを作って積極的にアプローチしていく姿は見ていて気持ちが良い。
また、趣味のお菓子作りでは苦労して固まっていく感じが好き…という理由からハンドミキサーを使わないと言うマッスルな一面も見せる。
半面、普段はとても可愛らしく感情表現が豊かで、事あるごとに猛男に惚れ直している。

そんな凛子に、猛男もまた毎回のように心中で「好きだ！！」と叫んでいる。
まったくブレの無いカップルぶりも、安心して見ていられる要素の一つかもしれない。

●2015年10月に実写映画化

鈴木亮平が主演を務め、実写映画が公開された。
30kgの増量で挑んだ役作りによる猛男の再現度は高く、オープニング2日間で動員11万8921人、興収1億3795万4800円をあげた。