ブログメディアBROGSにおいて、スタジオジブリプロデューサー鈴木敏夫氏が、日本アニメーション制作現場の未来像について語っていられます。
鈴木氏によれば、日本のアニメの制作現場はこれから先の未来に東南アジアへと移り、国をまたいで分業制作を行う時代がくると予見されています。
また、エヴァンゲリオンの庵野監督と「手描きのアニメーションはあと10年」と語ったエピソードも紹介されています。
結論から先に言えば、これから日本のアニメーションはおそらく東南アジアで作られるようになるでしょう。
近年〝クールジャパン〟などとして取り上げられ、アニメはソフト・ビジネスのように思われている面もありますが、その制作現場は、多くのスタッフが技術と労働時間を注ぎ込む職人仕事の集積で、まさにモノづくりそのものです。だから、日本のメーカー企業が直面した問題は、そのままアニメの現場にもあてはまるのではないか、と僕は考えているのです。
(中略)
実際、タイ、マレーシア、台湾で優秀なスタジオがいっぱい出来ています。ベトナムでも始まりつつある。それは単に、労働力が安いから、だけではありません。国際的なアニメフェスティバルなどで短編アニメのコンテストを行うと、東南アジアの国々からグランプリや上位入賞作品が次々と生まれています。それをみると、作品のレベルがいかに高いかがわかる。それは制作現場の技術力の端的なあらわれです。
(中略)
今、日本で何が起きているかというと、アニメーションというのは映画やテレビだけではないんですよ。たとえば二十兆円市場ともいわれるパチンコ。ここで使われるアニメのおよそ七〜八割はタイで作られています。
そして次に何が起きるか。日米による東南アジアのアニメーターの争奪戦です。そこで優秀なアニメーター、スタジオをいかに確保するか、という戦いが、もうすでに繰り広げられ始めている。よくiPhoneについて、アイデア、デザインはアメリカのアップル、重要な部品は日本、韓国、台湾で作られ、組み立てるのは中国で、と言われますね。それと同じようなことがアニメの世界でも起きつつあるのです。
(中略)
『新世紀エヴァンゲリオン』を手がけた庵野(秀明監督)とも話したのですが、「手描きのアニメーションっていつまで行けるのかな」と聞くと、「五年? いや十年くらいは行けるでしょうか」という答えが返ってきました。つまり、絵を描くといえばコンピュータで、という世代に全部切り替わるのがその頃だろう、と。
(中略)
しかも、先に挙げたように、アジアの制作現場とも、彼らはネットワークで繋がっています。だから国際的な分業も瞬時にこなせる。
だから、ジブリ的な手描きアニメーションは伝統工芸として残っていくのだと思います。時代の流れの中で孤塁を守っていく(笑)。
(中略)
さて、そうなると、日本のアニメづくりは今後、どうなっていくのか、という問題になります。
制作現場がどんどんアジアに移っていく、となると、「日本アニメは空洞化していく」という結論になりますが、それを空洞化というのは間違いではないか、というのが僕の考えなんですよ。
つまりアジア全域が、それぞれに役割を担って、一本の作品を作る時代が来た、と考えればいいのではないか。だから、日本の若者で自分は現場で絵が描きたいというのであれば、タイやマレーシアなどのスタジオの門を叩けばいいわけです。
http://blogos.com/article/100889/
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