東京喰種

感想とレビュー

●人を喰らう怪人"喰種（グール）"が跋扈する東京。

上井大学に通う青年カネキは喰種・リゼに襲われ瀕死になるも、直後起こった事故により捕食を免れる。しかしその後、彼女の臓器を移植されたことで、半喰種となってしまうのだった。
喫茶店「あんていく」の店主・芳村や、看板娘のトーカは実は喰種であり、彼らのサポートを受け、カネキはなんとか半喰種として生活を再会する事が可能になったのだった。

この作品の世界観はきちんと構成されており、喰種という存在も世間に認識されている。
“喰種”対策法や喰種特別対策局（CCG）など、人間側の対処方も確立されており、見た目で判断できない喰種に対して科学的なアプローチで正体を暴くことも出来る。
Rc細胞の数値が喰種という存在を示すなどリアルな設定が盛り込まれ、作品に説得力を持たせているのだ。

●後天性喰種であるが為のジレンマ

主人公のカネキは、元は普通の人間であるにも拘わらず、事故により半人半喰種という人生を歩むことになる。
しかし、それは生半可な変化ではなく、また自身の存在を確立する事さえも難しい事であった。
人を喰う事に抵抗や嫌悪を抱くものの、周囲の人間が美味しそうな肉に見えてしまう。当然、何も口にしなければ飢えて死んでしまう。
そしてその性質を否定する事は「喰種」という存在を否定する事にも繋がり、生来、喰種として生まれて来た者たちに対する否定でもある。
人間でもあり喰種でもあるカネキは、人間側にも喰種側にも身の置き場が無くなってしまったのだ。
幸いにして、元々行きつけであった喫茶店「あんていく」の店長・芳村は共存思考の喰種であった為、人間社会での生活を続ける手助けをしてくれる事になった。
人間の命を奪い、喰い生き永らえる怪人の存在に疑問と葛藤を抱きつつ、彼がどのような未来へ進んでいくのか。
少しづつ変化していくカネキの様子もまた、見どころの一つである。

●喰種にも喰種の事情がある

この作品における「喰種」は、人を喰らい、優れた身体能力と特有の武器を持っているが、姿かたちは人間そのもの。普段は普通の人間と変わらない生活をしている者がほとんどである。
ただ一点、大きく異なるのが味覚と食性であり、通常の食べ物は嘔吐物や排泄物のような食感と味に感じてしまうのだ。また、無理に人間以外のものを摂取すると体調を崩してしまう。
その為、人間との共存がひどく困難なのだが、それでも人間社会で生きていきたいという者と、本能のままに人間を狩り喰種としての生き方を貫く者。それぞれの事情や意思を抱えて生きている様子は、人間のそれとほとんど変わりが無い。
「怪物」と言うより「習慣の違う他人」のようでもある。
単純な喰種vs人間という構図には納まらない、複雑な内容になっている。

●閑話休題のCパート

EDの後……いわゆるCパートでは、原作コミックのおまけ4コマを元にしたゆる～い内容のショートアニメが見られる回もある。
シリアスな本編で気を張っていた所に投げ込まれるCパートは、微笑ましかったり、ほんの少しの救いがあったりと、こちらの気持ちをほぐしてくれる。