対魔導学園３５試験小隊

感想とレビュー

■時代遅れの剣士が率いる「雑魚小隊」の奮闘

人間と魔女との間で繰り広げられた「魔女狩り戦争」終結後、未だ人々の生活に爪痕を残す
「魔導」の力に対応すべく、「異端審問官」を志す少年や少女を描く作品。現在(2016年3月)も
刊行中のライトノベルを原作としている。

既に時代遅れの産物とされる剣術を唯一の取り得とし、劣等生達が集められた小隊、通称「雑
魚小隊」の隊長を務める草薙タケルを軸にストーリーが進行し、彼が様々な事件を通して仲間
との絆を深め、小隊をまとめ上げ、果てには一度逃げ出した過去と再び対峙する物語である。

■「人間」と「絆」の描写に重きを置いた構成

とある問題により権利を剥奪された元異端審問官、極度のあがり症で誤射を繰り返すスナイパー、
超人的な頭脳の使い道を武器の違法改造やセクハラに注ぐ整備担当、そして本来は人類の敵と
される「魔女」一癖も二癖もありそうな面々がぶつかり合い、認め合い、共に苦難を乗り越
える人間模様が本作品最大の魅力と言える。

と言うのも、全12話であるにも関わらずヒロイン1人あたりに2話を利用する構成のため、人物
像の掘り下げが丁寧に行われており、それぞれを個性と主張を過去を備えた、地に足のついた
「人間」として描く事に成功しているからだ。また、肌色方面への配慮も忘れられていないた
め、内面と外面の双方を、それも高い標準で楽しむことができる。

個の存在でも魅力的なヒロイン達が互いに科学反応を起こし、太く確かな絆が結ばれていく様
を眺めるのは小隊の成長を見守る隊長の視点、つまり、主人公の視点と重なる部分も多いため、
ヒロイン達をより身近な存在として感じられるだろう。

■アニメを見るだけじゃ勿体無い「原作」の強み

各人物の魅力を描く事を重視しているからか、作中で登場する「魔女」や「レリックイーター」
等のキーワードについては作品世界やシナリオ展開を損なわない程度、最低限の描写や説明に
留められているため、見方によっては物足りない部分があるかもしれないが、その際は原作に
手を出すことを強くお勧めしたい。

本アニメの見所は各人物を深く掘り下げる点にあり、事前に主人公やヒロインへの理解と愛を
深めた上で触れる原作は、より一層、魅力的となる点は疑いようが無く、アニメでは拾い切れ
なかった諸々も、余すことなく補完が可能である。

小隊のその後を追うもよし、知識を蓄えた上で再びアニメに戻ってもよしと、アニメと原作で
相互補完し「35小隊ループ」を堪能するのも、本作品の楽しみ方の一つだと思われる。