暁のヨナ

感想とレビュー

●早大に物語が広がっていく貴種流離譚

舞台は大陸風の架空の王国・高華王国。
国王の一人娘であるヨナ姫は、心優しい父王・イルや幼馴染であり護衛をしている風の部族長・ハクたちによって大切に育てられていた。
そして16歳の誕生日を迎えたヨナは、幼い頃より想いを寄せている従兄のスウォンとの婚姻を認めて貰おうとイル王の部屋へ向かう。
しかし、そこで見たものはスウォンが父王を殺害している場面だった。
スウォンは目撃者であるヨナをも殺害しようとするが、そこにハクが駆けつけ、命からがら城から逃げ出すに成功する。
二人はハクの故郷・風の部族の都に身を隠し、そこでハクの養祖父ソン・ムンドクからの助言を受け、かつて国の政にも関わっていたという神官・イクスのもとを目指す事に。
なんとかイクスのもとに辿り着いたヨナたちは、「伝説の四龍を探せ」という神託を受ける。
未だにスウォンへの愛着を捨てられず、逃げ続けるべきか立ち向かうべきか悩んでいたヨナだったが、神託とイクス本人の言葉を受け、四龍を探すための旅に出るのだった。

●主人公ヨナの魅力

ヨナ（CV：斎藤千和）は城で大切に育てられていた為、物語冒頭ではその次々と起こる事態についていけず、抜け殻のようになってしまう瞬間さえあった。
しかし、道中を経て己の無知を自覚し、凛々しくそして心優しく成長していくその姿はまさに貴種流離譚の王道と言えるだろう。
特に、折れた心を立て直し奮い立った後に見られる、芯の強さと物事をきちんと見つめようとする真摯さは実に魅力的で、心を動かされる。
それは後半に進むにつれ輝きを増していき、他の並み居る男性キャラクターに勝るとも劣らない「かっこよさ」に、女性でもキュンとしてしまいそうである。
また、普段の彼女はとても可愛らしく、天然なところも見せる。そのギャップがまた彼女をより一層魅力的にしているのかもしれない。

●ヨナを取り巻く仲間たち

幼い頃から常にヨナの傍に寄り添い、常人離れした身体能力で敵を圧倒するハク（CV：前野智昭）。
白銀にのような髪と白い肌、端正な顔つき。最もとしての使命に忠実で生真面目な白龍のキジャ（CV：森田成一）。
青い髪に美しい黄金の瞳を持ちながら、その能力を周囲から恐れられていた為、常に面をつけているシンア（CV：岡本信彦）は、しかしその環境下で育ちながらも非常に優しく仲間想いである。
緑の長い髪をなびかせ、軟派な態度で女性に接するが、面倒見がよく頼りになるジェハ（CV：諏訪部順一）。
金髪に碧眼で、幼い見た目通り元気で明るく能天気……ではあるが、時に鋭い一面も見せるゼノ（CV：下野紘）。
女の子のような顔だちで、賢く好奇心旺盛なユン（CV：皆川純子）。戦闘能力こそ皆無だが、生活面ではなんでも器用にこなし、旅の生活を支えている。
そして、謀反を起こしたスウォン（CV:小林裕介）にもまた、高華王国を強国にするという強い志があり、ただの悪役という役柄には納まらない。

いずれも実力ある豪華な声優陣が起用されており、一キャラクターとして楽しむ事も、ヨナとの関係性に想いを馳せる事も出来るだろう。

●架空の大陸として描かれる高華王国だが、名前や文化など中国を思わせる部分が数多く見受けられる。
作中の龍においても白・青・緑・黄そして緋となっており、五行を思わせる。
中華風ファンタジーが好きな人であれば、また更に別の角度からこの作品を楽しむ事が出来るだろう。